WORK

Project Report 02

利用者目線を貫き、
大型案件の
逆転受注へ。

先行する案件に潜んでいた問題

「できないと諦めるのではなく、できる為に何が必要か、突破口を見つける」。それが営業としての清田勝利の信条だ。その信条は、競合メーカーに決まりかけていた案件をひっくり返すという逆転劇を生むこともある。
舞台は都内高級分譲マンション計画。メディアも注目するこの大型再開発案件で、施主のデベロッパーはある悩みを抱えていた。地下駐車場のプランに不都合のあることがわかってきたのだ。その内容は後述するが、施主は問題解決のために清田に助言を求めてきたのである。他の再開発案件を通じて培ってきた両者の信頼関係がそこにあった。本音でいえば、施主は地下駐車場をIHI運搬機械に依頼したい。だが図面協力メーカーを決めるのは設計事務所である。そこを「何とかならないか」と、相談を持ちかけてきたのだ。
「設計事務所は競合メーカーと親密で、以前私が営業した際も門前払いでした。案件としては完全に負けパターンです。だが施主が当社を応援していたこともあり、何とかできるのではないかという自信はありました」。大逆転に向けた清田の戦いが始まった。

欠けていたのは利用者主体の目線

競合メーカーで進行中の駐車場プランでは、入場と出場の車の導線が重なることなど車の接触事故や利用者からのクレームにつながりかねない等の不効率なレイアウトでした。
なぜそんなことになってしまったかというと「主役はあくまで建物で、駐車場は後回し、必要な台数さえ確保できれば十分という風潮があります」と清田。だからこそ駐車場メーカーは専門家としてよりよい提案を行わなくてはならないのに、この案件ではそうした努力の形跡もなかった。施主はそのことに大いに不満を抱き、清田に相談を持ちかけてきたのである。
施主と清田はある作戦を立てる。月2回の定例会の席上、清田が施主側のオブザーバーとして出席し、問題点を指摘するという奇襲作戦だ。そして迎えた定例会。「我々の意見と思って聞いてくれ」という施主の言葉に促されて立ち上がった清田は、駐車場のレイアウトの問題点について指摘する。以前、清田を門前払いした設計事務所は当然激怒。「ふざけるな!」と面罵する声が会議室に響いた。結局その場は「もっとよい動線ができないか、考えてくれ」という施主の声で収められ、1ヵ月後の次の定例会へと持ち越されることになった。

ベストプランを貫き逆転受注へ

そして1ヵ月後、定例会の席で清田は原案の問題点を改めて指摘し、別の案を提案する。当然それはIHI運搬機械のノウハウが凝縮された、高効率でスピーディーな入出庫を可能にするプランだった。
設計事務所は渋い顔である。特筆すべきは、この時点まで清田はあくまで善意の第三者としてアドバイスするという姿勢を貫いたことだ。その気持ちに偽りはなく、清田の心にあったのは、利用者の立場で最適な方式を提案したいという思い。実際これまでそうしたアドバイスだけに終わった経験は何度もあり、清田自身は、そこに何のわだかまりも持っていない。純粋に「利用者のために」という思いを貫いているのだ。
そうした損得抜きの姿勢は、間違いなく人の心を動かす。最終的に施主は定例会の席上で「駐車場はIHI運搬機械に任せたい」と明言。図面の発注権こそ設計事務所にあるものの、利用者のためのベストプランという正論は揺るぎなく、駐車場は施主がIHI運搬機械に直接発注する異例の“分離発注”へと落ち着いた。清田が提案したのは「スーパースクエアパーキング」の通り抜けプラン。この案に変更したことで設計事務所は建物の設計のやり直しを強いられるも、「その費用も当然支払う」と施主が言えば、もはや言い返すことはできなかった。この瞬間、清田の仕掛けた逆転勝利が決まったのである。

「あなたと仕事がしたい」という勲章

「これまでで一番手間のかかった案件でした」と笑う清田。大型案件だから受注したかったのは当然であるが、根底にあったのは、施主のため、利用者のためという思いだった。
清田は「施主が“あなたと仕事がしたいんだ”と言ってくれたのが一番嬉しかったですね」と振り返る。清田の思いが通じたからこそ、施主もその言葉を口にしたのだろう。発注先はIHI運搬機械であっても、頼りにするのは清田勝利という個人。それは、営業にとって最大の勲章である。
なおメンツを潰された形の設計事務所であったが、清田にとってはここも大切な得意先。折に触れて連絡を入れ、禍根を残さないようにきめ細かく配慮した。こうした心づかいも、清田らしさである。
定例会議の席上で「ふざけるな!」と清田を面罵した設計事務所の担当者は、その後、営業へと配置転換。今では清田に「営業のコツを教えてくださいよ」と笑顔で話しかけてくるそうだ。これも清田という人間の度量を示すエピソードの一つである。

PROFILE

清田 勝利

Kiyota Katsutoshi パーキング営業部
中部グループ グループ長
1996年入社
情報科学科卒

パーキングメンテナンス部仙台サービスセンターでサービスエンジニアとして長くメンテナンスを担当。その後、上司の誘いで営業に転じ、パーキング営業部東北営業所へ。2008年、パーキング営業部東京グループに異動。2020年より現職。将来は駐車場のコンサルティング業務にも取り組みたいと考えている。