ビジネスコラム
Business column2026.04.09
機械式駐車場とは?デベロッパー・設計事務所が企画段階で検討すべきポイント
都市部のマンションや商業施設、オフィスビルでは、限られた敷地内で必要台数の駐車場を確保することが大きな課題です。そこで注目されるのが、機械式駐車場です。
この記事では、機械式駐車場の仕組みや方式の違い、設計段階で確認すべきポイントを、当社(IHIパーキングスクエア)の製品もご紹介しながら、デベロッパーや設計事務所のご担当者様向けに解説します。導入後のトラブルや手戻りを防ぎ、安全な駐車環境を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
機械式駐車場とは

機械式駐車場とは、機械装置を用いて車を格納・搬送する立体構造の駐車場です。利用者が車を所定の位置(パレットや入庫スペース)に停めると、昇降装置や横行装置などによって車両が自動的に移動し、空いている保管区画へ収容される仕組みです。
平面駐車場のように地上で横に展開するのではなく、上下方向に多層構造とすることで台数を確保できる点が大きな特長です。そのため、敷地面積や間口が限られる都市部のマンションや商業施設、オフィスビルなどで広く採用されています。
機械式駐車場と自走式駐車場の違い
駐車スペースを複数階層に設けた立体駐車場は、主に「自走式」と「機械式」の2種類に分類されます。両者は構造や必要スペース、設計上の前提条件が大きく異なります。
自走式駐車場は、一般的な平面駐車場と同じく利用者自身が車を運転し、スロープや車路を使って目的の駐車区画まで移動・駐車する方式です。
ただし、駐車区画に加えて車路やスロープを確保する必要があるため、一定の敷地面積が求められます。
一方、機械式駐車場は車の移動を機械が担うため、車路などのスペースを最小限に抑えられます。同じ敷地条件で比較した場合、収容効率は自走式よりも多く確保できます。そのため、敷地条件が限られている都市部などでは、収容効率の高い機械式駐車場が選択されるケースも多く見られます。
なぜ機械式駐車場が選択肢になるのか
敷地条件や法規制の制約が厳しい都市部では、限られたスペースで必要台数を確保することが大きな課題となります。機械式駐車場は、制約があるなかでも事業計画を成立させやすい方式のひとつです。ここでは、その理由をみていきましょう。
敷地条件・法規制の制約下でも台数を確保しやすい
都市部の狭小地や出入口が限られた敷地では、平面式や自走式駐車場では十分な台数を確保できない場合があります。
駐車場を計画する際は、建築基準法や都市計画法による用途地域ごとの制限に加え、駐車場法の規定も考慮する必要があります。また、出入口の位置に関する規制や、接道条件による車路幅員なども設計上のハードルとなります。
機械式駐車場では、車路やスロープを最小限に抑えつつ上下方向に台数を確保できるため、制約の影響を抑えられます。また、建物のボリュームを圧迫せずに駐車台数を確保しやすい点も特長です。
事業計画上、必要台数を現実的に満たせる
一定規模以上の建築物では、条例に基づく「駐車場附置義務」により、用途や延床面積に応じた台数の駐車場設置が求められます。
しかし、敷地条件や建物計画によっては、敷地内に必要台数を確保できない場合もあります。敷地外設置の特例が設けられているケースもありますが、距離制限などの条件があり、事業計画上のハードルとなることがあります。
機械式駐車場を活用すれば、限られた敷地でも収容効率を高め、附置義務をクリアしやすくなります。特にマンションでは、敷地内駐車場の有無が販売条件に影響することもあるため、事業計画の観点からも重要な検討事項です。
将来の運用・更新まで含めて計画しやすい
機械式駐車場は、あらかじめ更新や入替を見据えて長期計画に組み込みやすいという特長があります。更新・入替時には費用が発生しますが、事前に更新・入替周期や費用を想定した資金計画を立てておくことで、将来的な費用負担を均等に備えられます。
機械式駐車場の主な方式

機械式駐車場には複数の方式があり、それぞれ構造や収容台数などに違いがあります。
また、方式によって適した建物用途や敷地条件、必要な駐車台数、運用方法なども異なります。そのため、各方式の特長を理解したうえで選定することが重要です。一般的な機械式駐車場の方式について、主な特長や適した用途を整理すると次のようになります。
各方式にはそれぞれメリット・デメリット(特長・留意点)があるため、敷地条件や必要台数、運用方法などを踏まえて検討することが重要です。
| 主な特長 | 留意点 | 適した用途 | |
|---|---|---|---|
| エレベータ式 | ・省エネルギー ・低騒音・低振動 ・リフトのスピードアップで待ち時間を短縮 |
・格納位置により出庫時間に差が出る | 高層マンション 都心部オフィスビル |
| フォーク式 | ・スピーディな入出庫 ・低騒音・低振動 |
・導入コストが大きい | 高層マンション 都心部オフィスビル 商業施設 ホテル |
| タワー式 | ・最小のスペースで最大の収容効率 ・長年の納入実績をふまえた確かな品質と信頼性 ・スピーディな連続入庫可能 |
・導入コストが大きい | 高層マンション 都心部オフィスビル 商業施設 |
| 水平循環方式 | ・地下空間の有効活用 ・柱をかわしたレイアウトが可能 ・スピーディな入出庫 |
・十分な地下スペースの確保が必要 | 都心部マンション オフィスビル 商業施設 |




それぞれの特長を詳しくご紹介します。
エレベータ式
エレベータ式は、昇降装置によって車両を各階へ搬送する機械式駐車方式です。車両を出入口でパレットに載せ、昇降装置によって収容する階へ搬送します。所定の階まで上昇した後、横方向に移動して指定の駐車スペースへ収容され、出庫時はその逆の動作で地上へ戻ります。
駐車室を上下左右に立体配置できるため高密度な計画が可能で、都市部のマンションやオフィスビルなどで多く採用されています。
フォーク式
フォーク式は、くし形(フォーク型)の搬送機構を用いて車両を移動させる機械式駐車方式です。エレベータ式を発展させた方式のひとつで、車両の受け渡しを効率化することで、スピーディな入出庫を実現しています。都市部のマンションやオフィスビルのほかホテルなど、入出庫の利便性や快適性が求められる施設で採用されることが多い方式です。
タワー式
タワー式は、限られた敷地でも高い収容効率を確保できることが特長の機械式駐車方式です。都市部の商業施設などで採用されることが多く、「垂直循環方式」とも呼ばれる立体駐車装置です。パレットを垂直方向に長円形に配置し、観覧車のように連続して循環させながら車両を搬送します。
水平循環方式
水平循環方式は、地下空間を水平方向に活用して車両を収容する機械式駐車方式です。地下駐車場を計画するオフィスビルや商業施設、公共施設などで採用されることが多く、地上部のスペースを抑えながら駐車台数を確保することを目的に開発されました。
多数のパレットを平面上に2列以上配置し、前後左右へ循環移動させながら目的の車両を搬送します。地下に車路を設けずに車両を格納できるため、限られた敷地でも収容効率を高められ、地上の景観や建物用途への影響を抑えながら設置できるのが特長です。
当社の機械式駐車場特設サイト「機械式駐車場について」ページでは、上記4つの方式のパーキングを詳しくご紹介しております。当社ならではの特長も各ページからご覧いただけますのでぜひご覧ください。
参考方式
また、グループ会社であるIHI扶桑エンジニアリングでのお取り扱いとなりますが、機械式駐車場には、前述の大型・高密度タイプのほかにも、比較的小規模な施設や限られた敷地で採用される二・多段方式があります。ここでは参考として、代表的な方式を簡単に紹介します。
昇降ピット式
車両を上下2〜3段に重ねて駐車する機械式駐車方式です。下段の車両は地下に設けたピット(掘り下げた空間)に格納され、パレットを昇降させて入出庫します。比較的シンプルな構造で、小規模な駐車場などで採用されています。
昇降横行式
パレットを上下左右に移動させながら車両を入出庫する方式で、「パズル式」とも呼ばれます。空きスペースを利用してパレットをスライドさせることで目的の車両を搬送します。限られた敷地でも多くの台数を収容できるのが特長です。
昇降横行縦列式
昇降横行式を前後方向にも配置した機械式駐車方式です。パレットが上下・左右に移動しながら車両を搬送し、敷地形状に合わせて柔軟なレイアウトが可能です。限られた敷地を活用し、収容台数を増やしやすい方式です。
エレベータ式とタワー式の違い
ここまで代表的な方式を紹介しましたが、なかでもエレベータ式とタワー式は、都市部の大型物件などで採用されることが多く、比較されることの多い代表的な方式です。ここでは両者の違いを簡単に整理します。
エレベータ式は、昇降装置で車両を目的の階へ運び、横方向に移動して駐車スペースへ収容する方式です。
一方、タワー式はパレットが上下方向に循環しながら車両を搬送する構造で、エレベータ式とは仕組みが異なります。
つまり、エレベータ式は「昇降装置で運ぶ方式」、タワー式は「パレットが垂直循環して運ぶ方式」という点が大きな違いです。
機械式駐車場の方式はどう選ぶ?
機械式駐車場の方式は、敷地条件や収容台数、建物用途などによって適したタイプが異なります。
例えば、都市部の高層マンションやオフィスビルでは高い収容効率を確保できるエレベータ式やタワー式が採用されることが多く、地下空間を活用する計画では水平循環方式が検討されるケースもあります。
実際の計画では、敷地条件や車両サイズ・運用方法などを総合的に検討しながら、適した方式を選定することが重要です。
機械式駐車場の設計段階で確認しておきたいポイント

機械式駐車場は方式の選定だけでなく、敷地条件や法規制、利用条件との整合なども含めた設計検討が不可欠です。導入後のトラブルや手戻りを防ぐためにも、計画初期段階で確認しておきたいポイントを整理しましょう。
敷地条件と建築計画の取り合い
機械式駐車場の計画では、敷地面積だけでなく、間口や高さなどさまざまな条件を考慮する必要があります。また、建物の柱位置や基礎構造が駐車装置と干渉しないか、梁下寸法が十分に確保できるかといった構造的な整合性も、初期段階で検討しなければなりません。
このように、機械式駐車場の設計では、敷地・建物条件から周辺環境まで含めた総合的な計画が求められます。
法規制・高さ制限・安全基準
機械式駐車場は、建築基準法や駐車場法施行令によってさまざまな基準が定められています。たとえば地上設置型では、高さ制限や斜線制限なども考慮しなければなりません。構造によっては建築物として扱われ、建築確認申請が必要となります。
入出庫動線・利用条件
機械式駐車場は、方式や収容台数によって出庫時間や待ち時間が左右されます。たとえばタワー式や水平循環方式では、収容台数が増える分、出庫までに時間を要する場合があります。
さらに、車両サイズ制限(長さ・高さ・幅・重量)の条件によっては、一部の区画にしか駐車できないケースもあります。
マンションなどでは、居住者間の公平性を保つため、数年ごとに抽選で駐車区画を入れ替える運用事例も見られます。このように、収容台数だけでなく、利用動線や運用方法まで見据えた計画が重要です。
当社(IHIパーキングスクエア)では、スピーディに入出庫ができる機械式駐車場を揃えております。
詳しい情報はこちらのページからご覧ください。
設備・構造・保守管理
機械式駐車場は、パレットや昇降装置、センサー、制御装置など多数の機器で構成されるため、設計段階から保守性や運用性を考慮する必要があります。定期点検や故障時には作業員が現地でメンテナンスを行うため、安全に移動・作業できる経路とスペースをあらかじめ確保しなければなりません。駐車スペースの設計だけでなく、点検・修繕作業が円滑に行える設計が求められます。
当社では、業界トップクラスのメンテナンス体制で運営をサポートいたします。
詳しくは当社「機械式駐車場特設サイト」の「メンテナンスサポートページ」よりご覧ください。
安全性・リスク対応
機械式駐車場では、地震や停電などの災害時に、車両が取り出せなくなるリスクや車内への閉じ込め事故も想定されるため、非常用電源・手動操作装置・緊急停止装置を計画に組み込むことが求められます。
また、収容台数の条件によっては消火設備の設置義務があるなど、火災リスクへの備えも必要です。
運用・管理までを見据える
機械式駐車場は、管理責任者の選任と、利用者への操作方法の周知徹底が重要です。操作説明を受けた者が定められた手順で操作しなければ、事故につながるリスクがあるためです。
国土交通省が定めた「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」では、管理者がパンフレットや取扱説明書を交付し、内容を説明することを求めています。
設計段階で、管理負担や人件費、定期点検などの維持コストまで含めた仕様検討を行うことが、効率的かつ安全な運用につながります。
機械式駐車場のプランニングは「株式会社IHIパーキングスクエア」へ
機械式駐車場は、敷地条件や法規制、安全性、保守・運用など、さまざまな要素を総合的に検討することが重要です。導入後のトラブルを防ぎ、快適で安全な駐車環境を実現するためにも、今回紹介したポイントをぜひ参考にしてください。
「IHIパーキングスクエア」では、豊富な実績と高い技術力を活かし、お客様の敷地条件や用途に最適な機械式駐車場のプランニングから設計・施工までをサポートしています。
詳しくは「株式会社IHIパーキングスクエアの機械式駐車場」をご覧ください。