コラム

COLUMN

クロステック沼津訪問レポート

自走式駐車場は都市に建てられることが多いですが、今後の都市がどう変わっていくかを、静岡県沼津市で2023年3月に開かれたイベント「X-Tech NUMAZU SYMPOSIUM(クロステック沼津シンポジウム)」に参加し、展示会から探りました。

今回はイベントの様子をお伝えしながら、気になった取り組みについてご紹介いたします。

X-Tech NUMAZU(クロステック沼津)とは?

X-Tech(クロステック)とは、先進的なテクノロジーであるAIやIoTなどと既存のビジネスを融合させて誕生した製品やサービス、またその取り組みのことです。

X-Tech NUMAZU(クロステック沼津)は、街中に環境やエネルギー、インフラ、情報通信などさまざまな分野の先端技術によって「ちょっと未来」を感じられるスマートシティを目指した沼津市のプロジェクトです。

クロステック沼津プロジェクトには、賛同する民間企業や、研究機関が関わり、「人・まち・自然が調和し、躍動するまち」の実現にむけて産学官が共創しています。
IHIグループも、本プロジェクトに参画しています。

X-Tech NUMAZU(クロステック沼津)のイベント概要

クロステック沼津イベントの概要をご紹介します。

  • 開催日時
    2023年3月26日にクロステック沼津のイベントが開催されました。
     
  • 展示会公式サイト
    展示会公式サイトはこちらです。「X-Tech NUMAZU」

イベントプログラム

  • 基調講演
    研究機関の有識者による講演と、パネルディスカッション
     
  • 体験ブース
    X-Tech NUMAZUに参画する民間企業による、展示と体験ができるブース
    それぞれの分野での先端技術を取り入れ、スマートシティに向けた応用技術が体験できました。

基調講演と体験ブースについての詳細は後述していきます。

基調講演の内容

東京大学 先端科学技術研究センター特任准教授 吉村先生による基調講演の内容をご紹介します。

テーマ:「歩行者空間化とビックデータ」

冒頭、これまでの活動として、都市の分析に関する説明がありました。

ゴミの生態を把握した「trash truck(家庭で出たゴミ)」が、都市の中をどのように移動するか、ゴミにセンサを付けてトラッキングした映像や、マンホールを開けて汚水のサンプリングを行う「under world」についてご紹介されました。

普段見えない世界と、これからの持続可能な社会に向けて、どのようなことを改善していけそうか、と考えるきっかけになりました。 

主要テーマである歩行者空間化では、「今後は歩いて楽しいまち=歩行者中心のまちづくりが進むであろう」というメッセージがありました。

歩いて楽しいまちの具体例としては、東京銀座の歩行者天国などがあります。
現時点で吉村先生が挙げられた、世界のトップ2は「アメリカ・ニューヨークのハイライン」と「スペイン・バルセロナのスーパーブロックプロジェクト」というものでした。

スーパーブロックプロジェクトでは、市内の60%を歩行者空間化し、パブリックスペースが劇的に増えることで、市民生活を向上させるという取り組みでした。

また、ただ単に「歩く人が楽しく感じるだろう」という感覚で終わらせず、データを収集して歩行者空間化の効果を検証していく必要性を挙げられていました。

歩行者空間化するビフォーとアフターを測定して効果を検証するもので、バルセロナの事例では、歩行者空間化によって、従来に比べて店舗の売上が上がったことが挙げられていました。

筆者にとって印象的だったのが、「スマートシティ=住民の方々が、いかに幸せになるかだと思う」とおっしゃっていた点や、その後の講演で京都大学 人と社会の未来研究院教授 内田先生が語った「場所がもたらすウェルビーイング= 経済だけではなく心の充足」です。

まちづくりにおいては、変化を起こした後、その地域の住民や働く人々に与えた影響・効果を確認するところまでが重要だと学びました。

企業体験ブースの見学紹介

クロステック沼津では、プロジェクトの趣旨に賛同する民間企業3社が、連携して推進を図っています。

  • 環境・エネルギー:株式会社明電舎様
  • 情報の一元化:富士通Japan株式会社様
  • モビリティ:株式会社IHI

企業3社がそれぞれ、「ちょっと未来」を感じる技術・取り組みとして、技術や活用方法などの情報を発信している体験ブースを見学しました。

ドローン操縦体験

環境・エネルギー部会:株式会社明電舎様

ドローンの飛行ルートを自分でプログラミングし、実際に小型ドローン(Ryze Tech社製「Tello」)を飛行させる体験をさせて頂きました。
ドローン操縦というと、ラジコンのリモコンで動かすイメージでしたが、プログラミングであれば操縦ミスなく、設定した飛行ルートを飛ばせるため、定期的な配送などでメリットがあると感じました。

メタバース体験

情報の一元化部会:富士通Japan株式会社様

インターネット上にある3次元仮想空間=メタバースを、自分の分身となるアバターを操作して移動する体験をさせていただきました。
筆者がメタバースに対して抱いていたのは、ゲームの延長のような感覚でしたが、現在では、ボーダレスな活動ができるメリットを活かし、ビジネスや趣味などのエリアで、さまざまなサービスが実現・検討されていることを知りました。
例えば、バーチャル(電子)市役所として、「自分のアバターが仮想空間にある市役所の中を歩き回り、自宅にいたまま、市役所での本物の手続きを実現」といった構想が検討されているとのことで、今後の発展が楽しみです。

電動キックボード試乗体験

モビリティ部会:株式会社IHI

新たな移動手段として注目されている電動キックボードを、会場内に設置したコースで試乗しました。
筆者は都内のシェアリングサービスで電動キックボードに乗車した経験がありますが、機体の充電はどのようにしているか気になっていました。

都内のシェアリングサービスでは、人がバッテリーを交換して対応しているとのことでしたが、今回のブースでは非接触給電の架台が展示されており、より効率的な充電が可能なことを認識しました。

今後のIUKとスマートシティの関係について

IHI運搬機械株式会社(IUK)は、未来へ向けて沼津自走式駐車場という施設で積極的に実験を行っています。

沼津自走式駐車場は、次世代の駐車場づくりの実現のため、実験・研究を目的とした駐車場です。
日本で唯一の、フラット式・連続傾床式・スキップ式というすべてのバリエーションを同一敷地内に備えた実験施設です。

IUKが考えるスマートシティでの駐車場の役割は、「集約型スマートパーキング」「災害時における地域の防災拠点」です。

屋上ドローンポートやモビリティハブ・満空管理システムなど、新しいツールやサービス提供に向けて積極的に実験を行っています。
また、防災拠点(津波避難スペース・物資供給拠点・エネルギーステーション)として活用されるよう、地域社会にも貢献しています。

IUKは、未来のスマートシティに役立てるよう、駐車場の役割や価値を新たに創造する取り組みを行なっています。

参考:沼津自走式駐車場

見学を終えた感想

まちで暮らす人々の幸せを向上させる各取組を学び、弊社が提供する自走式駐車場も、今後のまちの変化に対応し、地域社会の人たちの感動や幸せに少しでも貢献するインフラになるよう、進化するのではないかと感じました。

例えば、「駐車場の中に庭園や芸術作品がある、歩いて楽しい駐車場」や、「屋上で晴れの日は太陽光発電し、雨の日は屋根になる駐車場」などがあっても良いかもしれません。

日進月歩の世界ですので、引き続き今回のようなスマートシティの取組をフォローし紹介していきたいと考えています。

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